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AMABIE  
2020 木材・胡粉・顔彩・金泥・ラピスラズリ

このアマビエ面は、疫病や不安の時代に現れる「祈りの顔」であると同時に、その出現自体が〈禍〉を予告する、〈まじない〉と〈まがまがしさ〉の間に立つ存在である。

アマビエは、本来「現れてしまった」ことで、すでに平穏の外側にある。
それは、浄化の象徴でありながら、災厄の訪れそのものでもある。

この面は、伝承の単なる再現ではない。
私は、現代を生きる身体と美意識、そして「装う」という行為に宿る祈りと呪術性を重ねながら、アマビエという存在に新たな顔を与えようとした。

真珠やレースは、彼女が“海のもの”であることを示すとともに、
能の装束に見られるような、装飾に込められた“力”と“境界”を象徴している。

この面を撮影する際、私は意識的に“魅せる構図”を選んだ。
それは、アマビエがただ祈りの対象であるだけでなく、
“見られる顔”として自らを写し、広める存在であるという、その本質に応答するためだ。

「私の姿を写して広めよ」――
そう語ったアマビエの命とともに、この面もまた、未来に向けて「顔の力」を告げる予見者である。

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『肥後国海中の怪(アマビエの図)』(京都大学附属図書館所蔵)
Photograph courtesy of the Main Library, Kyoto University – Amabie

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制作・能面師:麻生りり子 | Creator / Noh Mask Artist: Lilico Aso  
撮影:中野達也 | Photography: Tatsuya Nakano  
編集:麻生りり子 | Edited by: Lilico Aso

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