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Blue Earth
2020 木材・胡粉・顔彩

本作《Blue EARTH》は、地球を象徴する能面を通じて、「人間存在と環境との非対称的な関係性」を視覚化する試みである。

この面は、地球の化身として彫られているが、そこに神性や擬人化の意図はない。むしろ、「沈黙する他者」としての地球を造形することで、見る者に対して人類中心的な視点の転換を促す。

制作者の身体はこの面を介して、一時的に“地球”の顔となるが、その依代としての身体は、地球の存続にとっては可逆的であり、交換可能な存在である。

 

一方、身体にとって地球は、決して代替不可能な環境=条件である。この非対称性は、自然環境に対する人間の“無自覚な依存”と、“自律幻想”の危うさをあぶり出す。

また、面を通して「語らぬ存在に表情を与える」という行為自体が、自然への投影と構築を同時に孕んでいる。

 

本作は、自然(地球)を「擬似的な母胎」と見なす視座――すなわち、我々が決して逆に胎内へと還れない片方向の関係性――にも通じる問いを投げかけている。

《Blue EARTH》は、面という文化的メディアに「環境の顔」を刻むことで、「人間による自然の再表象は可能か」という問いを浮かび上がらせる。

それは、現代における“表象の倫理”と、“身体を媒介にした関係性の構築”に対する一つの応答である。

制作・能面師:麻生りり子 | Creator / Noh Mask Artist: Lilico Aso  
身体:麻生りり子 | Body: Lilico Aso  
撮影:中野達也 | Photography: Tatsuya Nakano  

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