似顔面|NIGAO-MEN
日本の似顔絵文化 × 能面――「写す顔」の新しい変換
にがおめん
AMABIE
2020 木材・胡粉・顔彩・金泥・ラピスラズリ
救いか、あるいは災い……
2020 木材・胡粉・顔彩
救いか、あるいは災い……

2020 木材・胡粉・顔彩
似顔面|NIGAO-MEN
私は、“何にでもなれる”顔の可能性を写す。
能面の制作では、古面を忠実に写す「写し」が基本とされている。
その一方で、創作面というジャンルがある。
創作面は、能面の技法や素材をそのままに、既存の型にとらわれず、独自の表情やテーマをもとに打たれる面である。
古面を写して作る「写し」とは異なり、型の継承ではなく、面打ちの想像力から新たな顔を立ち上げていく。
私のつくる「似顔面」は、この創作面の系譜に属している。
日本には「似顔絵」という文化がある。
写実的に“似せる”のではなく、その人らしさや内面を写し取るものである。
私の似顔面は、能面と似顔絵、それぞれの「写す」という文化を重ね合わせた創作面。
私が写しているのは、形や写実ではない。
似せることは入り口にすぎない。
その顔には、さまざまな感情、自然の気配、別の存在への通路のようなものが宿っている。
ひとつの顔の中に、あどけなさ、怒り、憂い、祈り、そして炎や風、月の光といったイメージやエネルギーの気配が共存している。
そういったものが、その人の顔に宿っていると感じたとき、私はそれを面として写し取ろうとする。
私は、写すことで“固定する”のではなく、写すことで“拡張する”。
日本の枠を超え、地球、そして宇宙へとひらかれていく。
顔というかたちに、目に見えないエネルギーを写し取ること。
それが、私の似顔面制作である。
——
制作:能面師・麻生りり子 | Creator / Noh Mask Artist: Lilico Aso
身体:麻生りり子 | Body: Lilico Aso
撮影:中野達也 | Photography: Tatsuya Nakano
編集:麻生りり子 | Edited by: Lilico Aso