能面師 麻生りり子

ベクトル|Vector
2022年 木材・顔料・合成ゴム・映像
|インスタレーション作品(能面造形+ミクストメディア)
万物は変化し続ける。 このエントロピーの増大の法則に抵抗し不変を手に入れようと、人類はテクノロジーを進化させてきた。 エントロピーの増大の法則は日本の「諸行無常」を彷彿とさせるが、諸行無常はエントロピーの増大を受け入れ、さらに、そこに哀愁を感じながらも慈しむ精神性がある。 このようなエントロピーの増大という自然法則の先にある諸行無常を内包するのが能面である。 中央に配置された若い女の能面から出る3つの矢印は、時間経過のベクトル、すなわちエントロピーの増大を表す。 矢印の先の能面は、時間経過による生物としての老化、物質としての劣化、テクノロジのーの進化を表す。 テクノロジーの進化によりイメージとしての能面を構築し保存することは、あたかも不変を手に入れることができたかのように錯覚させる。 しかし、能面は諸行無常を内包する存在であるため、不変を得ることはその精神性を再現しえず、能面としての本質が失われる。 つまり、いかなるテクノロジーを用いても再現しえないということこそ、諸行無常であり、エントロピーの増大なのだ。 いずれにせよ、人類が滅亡し、テクノロジーが消失してしまえば、イメージの能面も存在しえなくなる。 すべては、エントロピーの増大の法則の中の刹那の出来事に過ぎない。
映像共同制作:
東京国際工科専門職大学情報工学科
監修:鈴木雅実教授
制作実行:栁谷諒太
研究発表:
「能面の魅力を新たな形で提示するメディアアートの試み」
2023年 情報処理学会『インタラクション2023』にて発表。
東京国際工科専門職大学情報工学科、鈴木雅実教授らと共同研究。
展示歴:
2022年『中村光江と四人の弟子展』(田中八重洲画廊・東京)
撮影:中野達也






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