



在り続けるものは、何か。
時間は、何を残し、何を消すのか。
タイムカプセル|Time Capsule
2022年 木材・顔料・プラスティック
|インスタレーション作品(能面造形+ミクストメディア)
本作《タイムカプセル》は、能面をベースとした創作面を、透明カプセルに封入し、各面に一言のセリフと短いストーリーを付したシリーズ作品である。 「面を封じる」行為は、単なる保存ではなく、未来への投擲である。 それは過去の記憶を内包しながら、ある時点で誰かに“開封”されることを想定した、能面の「記憶装置」としての側面を可視化する試みである。 本作に登場するのは、地球の記憶を担うアバター《Blue Earth》、月からの訪問者《KAGUYA》、疫災を超えて現れた妖怪《AMABIE》の三体である。 彼女たちはいずれも、人間がいまだ触れきれていない「時間」や「終末」の感覚を内包し、やがて“開かれること”によって、我々の文明に再接続されることを待っている。 カプセルは、 「地球の終焉を先送りする装置」であると同時に、 開封された瞬間に終焉を呼び寄せる「時限爆弾」にもなりうる。 我々は、過去を閉じることで未来へと放つ。 それが人間の選択であり、芸術が引き受ける問いでもある。
【ショートストーリー】 ——決断 人類は、今、三つのタイムカプセルを前に、決断を迫られていた。 透明のカプセルの中には、人ならざるものが眠っている。 46億年の地球の記憶を記録する地球のアバター、Blue Earth。 月へ還ったはずの宇宙人、KAGUYA。 江戸時代から時を越えて現れた妖怪、AMABIE。 開けるべきか、開けざるべきか。 我々は、ついに決意する。 ——開封 カプセルを開けた瞬間、彼女たちはこちらを見て、こう告げた。 「お別れを言う時が来ました」 「地球に戻るつもりはないわ。どうせもうじき戻れなくなるけど」 「私のクローンで地球上を埋め尽くしなさい、今すぐに」 彼女たちの言葉が意味するもの—— それは、地球の終焉だった。 ——逃避 開けなければよかった。 いや、まだ間に合うかもしれない。 我々は、彼女たちの声を聞かなかったことにする。 カプセルを再び閉じ、未来へ放り出す。 この星ごと、まるごと大きなタイムカプセルにして。 またいつか、どこかで、誰かがそれを開けてしまうその日まで。

