

KAGUYA
2020 木材・胡粉・顔彩
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制作・能面師:麻生りり子 | Creator / Noh Mask Artist: Lilico Aso
身体:麻生りり子 | Body: Lilico Aso
撮影:中野達也 | Photography: Tatsuya Nakano
編集:麻生りり子 | Edited by: Lilico Aso
Statement|作品コンセプト ― KAGUYA
この面は、見る角度や光の当たり方によって、 あどけなさ、憂い、険しさと、さまざまな表情を見せる。 彼女の内にある様々な感情――怒りや葛藤も含めて――が、時に表に出てくるからだ。 だが、それらは一瞬ごとの移ろいにすぎない。 この面が映し出そうとしているのは、そうした変化の奥にある、 “本来の彼女”の気配である。 ただ静かなのではない、竹のようなまっすぐな芯を秘めた、揺るぎない存在の気配。 表情は移ろい、感情も変化する。 けれど、その奥には、彼女自身を成り立たせている静かな核が確かにある。 月が満ち欠けを繰り返しても、月そのものが月であることに変わりはないように。 この面は、目が合わないように作られている。 それは、彼女が“見られる”ことに対して距離を取っているからだ。 捕まえることはできない。語りかけても、彼女は応えない。 私はこの面を、「似せる」ためではなく、 見る者の想像や期待をすり抜けて、彼女が“ただそこにある”ことを写すために打った。 人は、見たいものを見る。 だが彼女は、そのどれにも応じない。 視線をすり抜けるように、ただそこに、光と影のあいだに立ち現れる。 その姿は、日本の「かぐや姫」を思わせる。 人の世界に一時降り立ち、再び光の向こうへ帰っていく存在―― 触れられそうで、決して触れられない月人である。